packed train


最近は、ラッシュアワーの電車にめっきり乗らなくなった。関西圏に住んでいて電車大好き(ちなみに「鉄ちゃん」ではない)な私でも、フリーランスになってからは毎朝かならず乗り込むということはなくなった。もう二度と「朝の痛勤電車」には乗るまいとココロに誓ったのだ。大学生の押し屋にぎゅうぎゅう押し込まれる通勤客を尻目に「まともな人なら、あんなものには乗らないのだ」と、まるでイソップ物語のキツネのように冷ややかな視線を飛ばしまくっている。


それにしても、最近の阪急電車の車内ときたら、びっくりするような最新設備を装備した車両がいつのまにか走っている。最新型の車両では、ドアのすぐ上になんと液晶画面が据え付けられており、次の駅は何駅だの、今乗っている車両は全車両のどの辺にいるだの、次の駅では左側と右側とどっちのドアが開くだのと、いちいち表示してくれる。良く言えば親切だが、悪く言えばおせっかい極まりないサービスだ。


「ほぇ〜、テクノロジーの進歩もここまできたかぁ」などとボンヤリ眺めている私ではない。自称「語学オタク」の私はその最新型液晶で外国語を勉強する方法を思いつき、機会があれば毎回電車内で食い入るように画面を見つめているのだ(こんなことにさえも熱中してしまうところが、いかにもアスペルガーっぽい)。


では、どうやったら車内の液晶画面でお勉強できるのか?それは意外と簡単で、少しの好奇心と推理力があれば誰でもできる。僕の行っている手順を紹介しよう。


まず、液晶画面をじっと見つめ、次に到着する駅名を日本語で確かめる。次に、その日本語の読みを頭に置いたままで英語や中国語、韓国語での表記を確認する。例えていうと、韓国語独特のハングル文字がさっぱりわからなくても、日本語と比較すると読み方や韓国語の表記のルールが徐々にわかってくるのである。


要は画面に次々と表示される4ヶ国語(日本語、英語、中国語、韓国語)の駅名を交互に比較し、読み方や表記のルールを見つけ出すだけなのだ。これならば、乗車中の手持ち無沙汰な時間を有効に活用できるし、なにより各国語で日本の地名を表記するルールがわかって、ちょっと頭がよくなった気分になれる。


僕はこの方法で随分と韓国語の読み方に慣れることができた。なにしろテキストもいらなければ先生も必要なく、もちろんお金を払うこともない。間違えたからと言って回りの視線を気にしてバツの悪い思いをすることもない。日本人にはうってつけの語学の入門学習法ではないだろうか。


一昔前には「駅前留学」という言葉が流行したが、これからは「駅内留学」、いや「車内留学」の時代になるだろう。数百円かの電車賃で語学学習、これほどオトクな勉強法は、学生時代に英語がすっかり嫌いになった人にも、いきなり「語学の達人」になれる日は近い。ほら、そこの大学生、スマホでゲームなんかやってないで、この方法で勉強してみてはどうかね?と、上から目線でつぶやいてみた。